伝説のVMDメルマガ『T-シャツの可能性を広げまくる男』
今日も小売の最前線でお仕事をされている方を迎えて、
お客様に商品を購入していただくことの楽しさや、
難しさについて熱く語っていこうと思っておりますので、
閉店まで是非お付き合いくださいね。
GUEST No.18 『T-シャツの可能性を広げまくる男』
バタンッ(ドアの開く音)
「いらっしゃいませ」(私、以下Fで)
「お疲れ様でーーす。」(以下K)
「いらっしゃい」
KさんはWeb上でTシャツ販売の専門店を運営しています。Tシャツと言
っても、売っているのはボディーとプリント技術。いわゆる、お客様からの
オーダーを受けて、オリジナルTシャツの作製をされているんです。私は昨
年10月から、リアルショップの開店に向けてのお手伝いと、Web店舗の
VMD的な改善のお手伝いをさせていただいております。
F:いらっしゃいませ、今日は色々とお話を聞かせていただく分、ご馳走し
ますので色々伺わせていただきますが、ごゆっくりなさってくださいね。
K:はい↓
F:お飲み物は何にしましょうか?
K:じゃー焼酎、芋のロックで
F:私もお付き合いします。
F:イヤァ~、しかし売上げ、絶好調ですね。僕自身、このマーケットに、
こんな需要があるなんて、想像していませんでした。
K:ほんとかですか?
F:ハイ、ちょっと簡単に読者の方に業務の内容をお教えいただけますか?
K:そうですね。先ずは、オリジナルプリントですが、こちらは、Tシャツ、
ブルゾン、バッグやシューズに至るまで、あらゆるアイテムに、色んな
プリントが出来ます。シルクスクリーンをはじめ、プリントにも色んな
手法があるんです。
私達の工場では、それこそ国内大手のセレクトショップのTシャツも、
お預かりして加工いたしますので、その技法の幅は非常に広いと考えら
れます。勿論、プリントする上でのボディー商材も全て取り揃えており
ます。
F:僕もびっくりしたんですが、例えば定番的なTシャツなら54色から色
が選べたり、素材や、後処理、加工なんかも色々選べるんですね。
K:ちょっと宣伝してもらってるみたいですね。ありがとうございます。
F:大丈夫です。サイト名とか、ブランド名は出しませんので。
K:残念です。
F:じゃー本題に入っていこうと思います。
今、Web上でのVMDに取り組み出しましたが、率直にどんな感想を
お持ちですか?
K:そうですね・・・うちの社長に深澤さんを紹介されて、最初は、どうか
な・・・?と思いました。今だから言えますが、お手並み拝見と言いま
すか・・・・スイマセン
F:大丈夫ですよ。十分にそんな空気を感じてましたから(笑)
K:(笑)そうですか。それは申し訳ありませんでした。
F:問題ありませんよ。かえって『全部お願いします』みたいな状態だと、
こちらも引いてしまいますよ。
K:じゃー話を戻しますが、私達の業界では、御客様の種類は大きく2つだ
と考えられています。一つは社内でのイベントやプロモーションに利用
されるブルゾンやTシャツですね。例えば新製品の販売やPRでお揃い
のTシャツを着たりする場合ですよね。もう一つは、学校系のイベント、
運動会・体育際・文化際などのイベントでクラスや、チームで作るTシ
ャツですよね。
F:なるほどなるほど、でも調べていくと、このマーケットって年間で100
億くらいの市場がありそうじゃないですか?コレって今でこそWeb上
で売上げをガンガン伸ばしていく店舗が出ていますが、Webがコレほ
どまでに盛り上がる以前は、お客様はどうしてたんでしょうか?
K:単純にお客様は、近所のスポーツ店や印刷会社に注文を出していました。
結構地域に根ざした業態だったんです。しかし、スポーツ店舗や印刷会
社へ出される依頼は、私達のような工場に仕事として廻ってきます。い
ずれにせよ、私達はその業務を請け負っていたんです。
ですが、私達のような工場が、Webでの店舗を持ち出すことによって、
先に挙げた、スポーツ店や印刷会社、代理店が取り除かれる構造になっ
てきていますので、価格破壊が起こり『早く・上手く・安い』のそれこ
そ吉野家的な、販売合戦によってWebでのオリジナルTシャツ作製の
需要が一気に伸び上がっていったんでしょうね。
F:なるほど。ほんとに、安くTシャツって出来ちゃいますもんね。20人
で作ったら一枚1000円位で出来ちゃいますもんね。今、時代的に、色ん
な場面で元気がないと言われていますから、こういった商材や需要があ
るんでしょうね。
K:そうですね。しかも、商品もこれから、もっともっと安くなる可能性が
高いですから個人でもTシャツは作るということが、スタンダードにな
る時代がくるかもしれませんね。
話を、VMDに戻しますが、現在オリジナルプリント業界は、そんな事
情で売上げ自体は、他の業界と比べて伸びているんです。特に弊社のよ
うなWeb店舗が好調な状態でしたからね。VMDを始めるにあたって、
顧客を16分割したり、それぞれのニーズや理想、または着用シーンな
どを考えたり、それによって販売計画を立てたりというのは、今でこそ
当たり前のように感じますが、始めた当初は、違和感ばかりでしたよ。
正直、いろんなこと考えなくても売れてましたからね。
しかも、オリジナルTシャツを欲しいお客様が、検索して来店して下さ
る訳ですから、『早く・安く・上手い』だけで、打つ手は十分だと感じ
ていました。ですが、この取り組みを始めたことで、お客を知り、ニー
ズを考えると、自分たちの本来持っているメニューのあるべき姿、理想
の提供方法が見えてくる。
当たり前ですが、これまで材料と完成形の提案だけで、運営していまし
たから、自分たちはこんなにも「お客様の為のベネフィット」、深澤さ
んが言うところの「機能ベネフィットと情緒ベネフィット」を持ってい
て、それをお客様に提供できる、このような図が見える化してきたんで
す。だから誰よりも・どこよりも『早い・安い・上手い』が、『何時・
誰の・何に対してどれくらい』便利なのかが分かるようになってきまし
たよ。
F:そうですか、ありがとうございます。
しかし、Webだけでなく、今後リアルな店舗を持つと言う方向に動い
ていく訳ですが・・・・・
K:そうですね。今も深澤さんと一緒にMTGをしている訳ですが、本当に
店舗を持つべきか、そうでないかは、正直まだ見えてきていません。
F:そうですね。これに関しては、勿論前例はありますが、まだ結果を出し
ている店舗が少ないだけにチャレンジですね。
K:そうですね。でも必ず成功させたいと思っています。
モノを売るだけではなくて、自分で作ること、体感、体験出来ること、
さらに、それを色んな人と共有できること。こんな店があってもいいと
思います。
F:僕もそう思います。今後、どこに、どれ程の規模のどのような店舗を出
すべきか?コンテンツは?さらにエンターテイメント性があるのか?な
ど、詰めるところは、まだまだありますが、必ず成功させましょう。
K:ありがとうございます。リアル店舗を持つ上で、顧客分析や自分たちの
提供できるベネフィットが見えてきました。
これを、リアルとWebで使い分けるのか?それとも相乗効果を生ませ
るのか?出店場所やターゲットという、リアル店舗では当たり前の発想
が無いままに、Webでの商売をしてきましたので、非常に楽しみです。
F:僕もです。普段はリアルな店舗の運営・出店のお手伝いをしていますか
ら、ある意味、今までとは逆パターンなんです。しかし、今後、この取
り組みは必ず僕自身にも非常に意義ある取り組みだと思っておりますの
で、必ず成功させましょうね。
K:ありがとうございます。
F:こちらこそ今日はありがとうございます。
今回の来店いただいたKさんですが、実は以前に一度、現在とは別の会社で
オリジナルプリントのリアル店舗に携わっていたそうです。そして今一度の
再チャレンジ。
Webからリアル店舗へという、本当に今まで僕がお手伝いさせて頂いたパ
ターンとは逆の進行ですが、ある意味、今後のリアル店舗・Web店舗の存
在意義やそれぞれの顧客の使い分け、はたまた連動による相乗効果など、リ
アル店舗からWeb店舗の発想では見えない内容が見えてきそうな予感がし
ております。
リアル店舗が開店してからの状況は、また改めて、この場にKさんをお招き
して語り合いたいと思っております。
深澤 智浩
株式会社深澤企画 代表取締役
パリをはじめとする海外の店舗や、国内のSM/GMSでのあらゆる店舗・売場の店舗デザイン・店頭戦略を学び、独立。現在は、小売業からの依頼に加え、メーカーからの販促提案・ショールーム展開の相談など様々な業種・業態の店頭戦略(SP・VMD・設計・店頭ブランディング)を、年間100件以上行っている。近年では、ショッピングモールやチェーンストアからの依頼も多くなっている。また、「商業界」の教育講座、デザイン専門学校、企業研修でも指導にあたり、人材育成にも注力している。